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2014年08月17日 08:03

【レビュー】「VAMPIRE ~愛と憎しみの果て~」、愛する人の名を絶叫する主演イ・ホンギ

8月10日(日)、Bunkamuraオーチャードホールで韓国ミュージカル「VAMPIRE~愛と憎しみの果て~」が開幕した。主演のドラキュラ役をソンミン(SUPER JUNIOR)、ソンギュ(INFINITE)、イ・ホンギ(FTISLAND)のトリプルキャストで上演する中、初日の舞台を飾ったのはイ・ホンギだった。「僕がヴァンパイアになりました!!バンドのライブの時とは違う、また新しい僕の姿、ミュージカルで会えますよー。ぜひ楽しみにしてください!」と事前に明るいコメントを発表していたイ・ホンギ演じるドラキュラは果たして・・・!?

今作のベースとなるミュージカル「DRACULA」は、1995年にチェコ・プラハのコングレスセンターで初演されて以降、ヨーロッパ各国で500万人以上を動員したヨーロッパミュージカルの代表作。それをベースにして作られたミュージカル「VAMPIRE~愛と憎しみの果て~」は、音楽・ストーリー・設定をドラマティックにリメイクし新たに誕生した。そして世界中のどこよりも早く今回日本で上演する。

開幕2日目の8月11日の舞台に招待され、日本初上演のミュージカル「VAMPIRE~愛と憎しみの果て~」を鑑賞した。イ・ホンギ演じるドラキュラの、激しく哀しい愛の物語のレビューを掲載します。

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<story>

物語は1324年から始まる・・・。

14世紀、十字軍の英雄だったドラキュラは教会の腐敗に怒り、大司教と人々を虐殺する。恋人アドリアナは衝撃を受け、自ら命を絶ってしまう。ドラキュラも後を追おうとするが、死ぬことができない。大司教の呪いが彼を吸血鬼≪VAMPIRE≫に変えていた。

300年後の1624年、ドラキュラ伝説を研究する考古学者ロレインは恋人で神父のスティーブンの反対を押し切り、伝説の地トランシルバニアを訪れた。招かれたパーティーでは吸血鬼とハンターが大激闘する中、ロレインは望んで吸血鬼と化し、スティーブンはドラキュラにロレインを奪われた復讐に燃える。

時は流れ1924年。吸血鬼たちは密かに人間社会に溶け込んでいた。ドラキュラ城はカジノとなり、カジノのオーナーになったドラキュラが、オペラハウスの前で偶然見かけたポスターには、アドリアナと瓜二つの歌手サンドラがいた・・・。

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この舞台を観た人は、しばらくの間「アドリアーナー!アドリアーナー!」と何度も何度も愛する女性の名前を呼ぶドラキュラ(イ・ホンギ)の声が耳から離れないだろう。

深い闇、風の音、響き渡る雷鳴・・・「Vampire」の血塗られたタイトルバックから真っ赤な血がしたたり落ち、物語は幕を開けた。重厚で奥行きのある神殿のセット、讃美歌のような荘厳な音色、ズシッとくる群舞シーン、一瞬で観客の気持ちをステージにくぎ付けにしてしまうゴージャスな演出。イ・ホンギ演じるドラキュラの登場シーンは特に印象的だ。十字軍の英雄ドラキュラにふさわしいヒーローの登場!その英雄ドラキュラは、なぜVAMPIREに変わったのか? その理由は冒頭で明かされる。

愛するアドリアナは死んでしまった。なぜ彼を待たなかったのか? アドリアナの死がドラキュラを狂わせる。序盤から怒りや絶望という激しい感情をぶつけるイ・ホンギの体当たりの演技が芝居をリードする。アドリアナと一緒に死を選ぶことに迷いはないのに、なぜ!なぜ死ねない。悲痛なドラキュラの叫び。死んでも死んでいない、それが大司教の呪いだった。

この物語、実に俗っぽくどろどろしている。大司教だけど欲深かったり、神父なのに嫉妬したり、登場人物が聖職者であろうと自分の感情のままに生きる姿が生々しい。いやむしろ、その人間臭さに好感を持つ。人はどこまで欲深いのか? どこまで相手に求めるのか?  愛していたのに復讐心に変わり、自分が誰かを愛してるという気持ちも、最初は無償の愛だったはずが、いつしか相手から愛されること、見返りを求めてしまう。純粋に愛していればいい、愛する人が幸せならいい、と願っていたはずなのに、愛に代償を求めすぎる登場人物たち。彼らの、愛に対する貪欲さが、気持ちに歯止めをきかせられなくなる。一番ピュアで、愛に対してポジティブだったロレインでさえ、「捨てられた」という言葉を口にするようになる。相手に求めすぎだよ!と声を掛けたくなるようなもどかしさだ。

ドラキュラはアドリアナとロレイン、2人の女性から愛される。もっとずっと幸せでいても良かったはずだ。もっと笑顔が溢れるドラキュラでもよかったはずだ。2人の女性に「私の愛おしい人」と慕われるドラキュラ。なのに心はずっと満たされず、失ったものを追い求めていた。過去の愛に自分を縛り付け、失ったことへの後悔をひきずったまま、時間をただ過ごしてきた。ドラキュラが、自分は愛されいるということに気づいていたら、エンディングは変わったのかもしれない。そして物語は結末へと加速する・・・。

圧巻なのは、ドラキュラを愛する女性たちの歌の上手さだ。技巧的な上手さを超えて、心を揺さぶる迫力と、どこまでも伸びる透き通った高音に圧倒された。

イ・ホンギの見どころのひとつは、彼のすべての登場シーンだ。ドラキュラの登場シーンは意表をついた登場が多く、何度も驚かされた。是非、実際の舞台を観て確かめて欲しい。

イ・ホンギというアーティストは元々歌で人の気持ちを動かすことが出来る人だ。演技力もある。その彼が絞り出すように「アドリアーナー!」と叫ぶ。何回叫んだろうか。ボリュームのある声は力強く、主演にふさわしい迫力ある歌声が舞台で輝きを放っていた。この存在感からすると、ひょっとしてミュージカルの次回作のオファーが殺到してしまうかもしれない。それは困った。FTISLANDのバンドのボーカル、イ・ホンギがやっぱりもっとカッコいいからだ。でも、Bunkamuraオーチャードホールの舞台は、ドラキュライ・ホンギが完全に掌握していた。

*8/19,20、イ・ホンギ主演。是非、熱演を目にしてください!

(Text:Kiyori Matsumoto)

<公演概要>

【公演名】ミュージカル「VAMPIRE ~愛と憎しみの果て~」

【公演日程】 2014年8月10日(日)~8月27日(水)

【公演会場】Bunkamura オーチャードホール

【演出】ワン・ヨンボム

【出演】ソンミン(SUPER JUNIOR)、ソンギュ(INFINITE)、イ・ホンギ(FTISLAND)、

ユン・ゴンジュ、チェ・ヒョンジュ、イ・ゴンミョン、ソ・スンウォン ほか

【チケット料金】S席 16,000円(税込) A席 10,000円(税込)

【チケットお問合せ】ticket-info@quaras.co.jp

【公式HP】https://www.vampire-musical.com/

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