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【レポート】Jun. K(2PM)、ミュージカル『JACK THE RIPPER』に出演 圧倒的な歌唱力で魅了

2013年11月08日 21:49

昨年、青山劇場に4万人を動員した韓国ミュージカル『JACK THE RIPPER』が、会場を神奈川芸術劇場に移して再び日本に上陸した。豪華韓流スターが共演する話題作の主演・外科医ダニエル役をアン・ジェウク、オム・ギジュン、ソンミン(SUPER JUNIOR)、チ・チャンウク、Jun. K(2PM)、ソン・スンヒョン(FTISLAND)の6人が演じ、それぞれ個性的なダニエルを魅せる中、Jun. K演じるダニエルが11月6日、初日を迎えた。

舞台は1988年のロンドンから始まる。1年を通して曇り空が多いと言われるロンドンの夜はさらに重苦しく憂鬱な雰囲気を漂わせて、当時実際に起きた未解決の「切り裂きジャックの事件」を想像させる。夜のロンドンの暗さが物語全体を静かに包み込み、照明も舞台全体も不気味なダークトーンに染ている。この押さえつけられたような、息苦しさを感じさせるような暗さの中、連続殺人事件が起こり、街中が不安でざわめく中、Jun. K演じるダニエルが民衆の前に現れ、「僕は犯人を知っています。そいつの名はジャック!」と告白するシーンから物語は大きく展開していく。Jun. Kファンが圧倒的に多い会場内では、最初の登場シーンに観客の多くが「はっ」と息をのむ空気が伝わってきた。

Jun. K演じるダニエルは、純粋に医療の未来のために臓器移植に取り組む医師。臓器移植を研究しながら、グロリアと出会い恋に落ちる。事件に巻き込まれ、重傷を負ったグロリアを救うには臓器移植しか道はない。ダニエルの心の隙間・・・それは、グロリアを愛しているということ、彼女の病は自分の責任であると感じていること、そして彼女を治してあげれるのも自分しかいないと信じていること・・・。

これらの気持ちが生み出すダニエルの中の弱さや慾、「人を愛し、愛されたい」という欲求から生まれた心の隙に悪魔がとりついてしまう。悪魔とはジャック。だが、ジャックとは実在の悪なのか、ダニエルの心の闇が取り込んでしまったジャックという名の幻なのか。人間が抱えた善と悪の微妙なバランスが何かをきっかけに崩れた瞬間、心の中に抱えていた邪悪な自分を押さえきれずに、自分自身が飲み込まれてしまう。張りのある高音の伸びが魅力的なJun. Kの抑えた演技、抑えた歌唱が、ダニエルの内側に抱えた葛藤を表現していた。ダニエルは自分の中にジャックという怪物を作り出してしまったのだ。

『JACK THE RIPPER』の見どころの1つに、舞台美術も挙げられる。夜の盛り場、ダニエルの研究室、警察署内、ロンドンの街の裏通りなど、いくつものシーン(背景)を大胆に舞台転換して魅せ、一瞬にして世界が変わるスピード感に驚かされる。Jun. Kはダニエルの内面に向かう姿を丁寧に演じ、自分自身の中で大きくなる影をコントロールできず見失いそうになり、そのボーダーを超えた瞬間には絶叫し、その苦しみを背中で演じていた。愛する人の命を救うために自分がやっていることは正しいのだ、と何度も自分に言い聞かせながら、超えてはいけないボーダーを踏み越えた時、ダニエルの内面にジャックという魔物を作ってしまう。そして、やがてダニエルには取り返しのつかない悲しい結末が・・・。果たして、殺人鬼の正体は?

第2幕は全体的に重苦しく、ライブでは観たことのないJun. Kを観ることになるが、第1幕のダニエルとグロリアの出会いから恋に堕ちるまでは、この物語唯一のハッピーで明るいシーンが描かれており、ライブでも見慣れたJun. Kの明るい笑顔や心地いい歌声に癒される。街の娼婦に明るく投げキスしたり、カフェで友人達に「ついに僕は恋に落ちてしまった」と嬉しさを隠しきれずに歌ったり、グロリアに「君に初めて会った時、心臓が止まった」と告白するシーンに観客のドキドキ感も伝わってきた。

全編が「歌」で構成されているため、ドラマチックなバラードから、エキサイティングなロックまで、登場人物の様々な心情をエモーショナルな音楽表現で展開し、圧倒的な歌唱力が物語に説得力をもたせる。全てが終わり、カーテンコールで姿を見せたJun. Kは、初日舞台を演じきった達成感と安堵、そしてこれから続く舞台への緊張感が入り混じったピシッ引き締まった表情が印象的だった。

(文:Kiyori Matsumoto)

■ ミュージカル『JACK THE RIPPER』(ジャック・ザ・リッパー)
KAAT神奈川芸術劇場
2013年11月4日~11月30日
全30回公演

◎ Jun. Kは、11月21日、22日、25日に出演。また、11月21日の公演は「シアタービューイング大阪」(https://jack-the-ripper.jp/theater/)でも中継で観ることが出来きる。

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